Duskin Leadership Training in Japan

活動報告

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第10期生 カスンの活動報告

Strong hands - Strong mind - Strong heart

今回はMarks & Spencerからの支援について報告します。

(Marks & Spencer は衣料品・靴・ギフト商品・家庭用雑貨・食品などの自社ブランドを販売するイギリスの小売業者 http://www.marksandspencer.com/

2014年1月2日にMarks&Spencer(以下M&S)事務所で話し合いが行われ、“ジューキミシン・アパレルトレーニングセンター”プロジェクトについて、支援をすることに合意してくれました。話し合いは大変建設的かつ有益なもので、ろう者の能力開発支援のために、私たちろうコミュニティと協力するための道筋を示すものとなりました。

Sumaga Ruhunuろうサークル(SRCD) は、コミュニティから置き去りにされたろう者、とくにろう児や、中退者を対象に、彼らの支援をするために1996年に設立された、非政府・非営利・慈善団体です。

サークルの大きな狙いは、年齢、性別、障害、民族、収入などにとらわれず全ての人を対象とすることです。

ろう者の才能を向上させ、社会において、自由で平和な生活水準を得られるようにします。

また、私たちは、将来的には“ろうコミュニティの繁栄”を描いています。

私たちの組織は非営利組織として、全国障害者協議会に加盟しており、スリランカ南部のゴール、マータラ、ハンバントタなどから417人のろう者メンバーがいます。ろう者による、ろう者のための組織です。設立以来の活動の中で、ろう者は、様々な場面において多くの問題に直面していると気づきました。

以下は、彼らの生活の中で抱える主な問題です。

・設備不足による職業訓練を受ける機会の欠如

・ろうや障害に対する否定的な態度

・就労機会の欠如及び職場におけるアクセシブルな設備の欠如

・他者とのコミュニケーションにおける最大のバリアである、手話に対する認識不足

スリランカでは、ろう者が服飾業界で職につくチャンスがありますが、残念ながら応募するための技術が十分ではありません。このプロジェクトを実施することによって、このギャップを最小限にし、ろう者が就職できることを目的としています。しかし、トレーニングを受けたとしても、ろう者にとって職を探すことは非常に難しいです。社会のほとんどの人々が、手話に関するほんの少しの知識も持ち合わせていないことが、ろう者の就職にとって厳しい状況を生み出しています。障害に対する否定的な態度、つまり組織において歓迎されないということが、ろう者の働くことへの意欲を失わせています。他の障害と比べても、この問題がろう者の失業率を増加させています。2012年に世界的に有名な、“Marks & Spencer”が、“Marks & Start”という名前のプロジェクトを立ち上げ、3台のミシンを寄付してくれました。そのプロジェクトは、前述の問題を解決すると共に、数人のろう者メンバーへ裁縫の職業訓練を提供する基となりました。私たちの団体はメンバーの会費によって維持されていますので、機材があったとしても、裁縫のインストラクターを雇う資金やその他の必要なリソースを確保する資金がなかったので、訓練を実施するのはとても困難でした。ですが、まずは試してみようということで、ついに2013年6月21日に、このプログラムは、3人のろう者を対象としたとても小さな規模でしたが、スタートしました。

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オフィスのマネジメントとインストラクターへの給料の支払いは非常に大きな困難でした。2013年、このプロジェクトが適切に実施されるために、カスン・ジャヤトゥンガ氏がスマガサークルの代表に選出されました。しかし、私たちの協会の資金調達ができず、このプロジェクトは一旦中止せざるを得ませんでした。

ですが、カスン氏の、このプロジェクトに対する強い想いのもと、手話通訳インストラクターのKelum Indika氏も参加し、どうすればこのプロジェクトをうまく実行できるか議論しました。その際には、M&Sの当時コンプライアンスマネージャーであったShabry Aher氏からも、電話でこのプロジェクトの問題や困難について意見を述べられました。更に、カスン氏はShabry氏とメールやスカイプで議論を続けました。2013年8月に、会計兼コーディネーターのDaya Jayawickrama 氏がM&Sの事務所を訪れ、裁縫訓練プロジェクトに関する問題と、今後の訓練のことについて、深い議論がなされました。

Shabry氏はカスン氏に、2年間のプロジェクトプロポーザルを作るよう進言しました。カスン氏はプロジェクトの問題解決のための支援を得るために、プロポーザル案を作成しました。ダスキン研修終了後初めてとなるプロポーザルライティングでしたので、とても難しかったです。このプロポーザルでは、ろう及び聴覚障害者の80人のメンバーが訓練を受けられること、及びスリランカ南部地域の職業訓練校のスタッフ、及び縫製産業従事者の手話コミュニケーションスキルの向上を目指します。

更に、このプロジェクトで他の従業員に対して、彼らのろうや障害に対する態度を変えるための啓蒙にもつながります。私たちのサークルの活動にとって非常に役立つものです。

Sumaga Ruhunu アパレル訓練学校が2013年10月30日にオープンしました。

31日の開校式にはカントリーマネージャーの Thushara Wickramanayake氏 とコンプライアンスマネージャーのShabry Aher 氏を招待し、M&Sのマネージャー職の全員、Brandixの人事マネージャー, Voguetex, Perfect garment, Nobleswear, など、M&Sが南スリランカで展開している関連会社が参列し、彼らから、13台のミシンが寄付されました。

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その日は、私たちにとって過去16年のうちの、最も記念すべき日となりました。M&Sは、今後1年の継続支援を決定し、スタッフの給料、研修材料費、研修生の交通費などのランニングコストを十分に補える額である500ポンドを支援してくれることになりました。また13台のミシンが寄付されたことによって、より多くの訓練生を受け入れることができるようになりました。

2014年1月以降も、M&Sの支援によって、引き続き訓練を続けられることができています。

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2014年1月から7月までの活動

1月の第1週に、要件を満たした20人のろうの青年がプロジェクトに採用されました。マータラ県事務局、ソーシャルサービスオフィサー、ロハナ特別支援学校、タンガリろう学校校長などへ必要な施策を提言するために、17歳から40歳の若いろう者の聞き取りを実施しました。

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この聞き取りの結果、1月5日に啓蒙プログラムが実施され、新たに10人の研修生が採用されました。Munsif氏とUpul Nishantha氏が裁縫のインストラクターとして採用され、常勤のコーディネーターオフィサーとしてDaya Jayawickrama氏が採用されました。 (手話通訳者以外のポストは全てろう者です)

1月12日には、スマガサークルの代表や関係者などが参加し、訓練生の親のミーティングが開催されました。そこでは親に対してこの裁縫訓練の意識づけをするとともに、この訓練を受けることによってどんなベネフィットが得られるか、ということが説明されました。

1月15日にも啓蒙プログラムが開催され、新たな訓練生が採用されました。

このプロジェクトは、2人のろうのインストラクターの手話による指導のもと、順調に実施されました。

2014年1月26日に、全ての訓練生の親が参加し、訓練に対する肯定的な考え方の意識づけ及び意識向上のためのプログラムが実施されました。

2014年2月9日に別のワークショップが開催され、新しい訓練生が採用されました。

2月16日には訓練生の課題や問題について議論するためのワークショップが開催されました。そこで、3ヶ月の訓練終了後に、仕事を探さなければならないという問題が浮かび上がりました。その問題解決のために、訓練中に必要な措置をとることが決まりました。

2月23日にRuhunu Sumagaろうサークルの総会が開催され、そこでこのプロジェクトのことが紹介されました。

2月3日に最初の啓蒙プログラムが開催されました。Voguetexから人事マネジャーなどの数人のスタッフが参加しました。私たちのサークルからも8名の訓練生が参加し、また、協会の代表のHon氏、手話インストラクターのKelum氏やMalika Darshani氏も参加しました。

Voguetexはろう者を雇用した初めての会社であり、ろう者との接し方や、ろう文化に対して理解があります。スピーチをした人々は、皆ろうの若者たちが非常に優秀に仕事をこなしていると述べました。

訓練生自身は新しい職場での困難や問題について語りました。問題の多くは給料や、福利厚生、退職などに関わることです。

このワークショップは成功裏に終了しました。ろう者は彼らの唯一のコミュニケーション手段である手話であることから、職場において手話通訳者を配置して欲しいと要求しました。スマガサークル代表は、必要に応じてサークルから手話通訳者を派遣すると約束しました。

Weligama ワークショップ

関係者らによってプロジェクトの第1ステージの内容について、評価がされました。

2月24日に第2ステージのため、新たな訓練生を採用するためのワークショップが開催されました。

タンガイルの施設から2名のコーディネーターも参加しました。10名の新しい訓練生が採用されました。遠隔地に住むろうの少女の親からのリクエストにより、宿泊所も設けられました。6台のミシンが設置され、女性訓練生のために女性の管理人が雇われました。この宿泊所もM&Sから支援を受けました。この宿泊所のおかげで、遠隔地からの訓練生を受け入れることができるようになりました。

宿泊所開所

啓蒙ワークショップが開催され、多くの障害者が参加しましたが、その内わずかな数のろう者だけが訓練生として採用されました。例えば知的障害のあるろう者は訓練への参加は難しいからです。しかし、ろうと他の障害を併せ持つ人も、ミシンを使うことができれば訓練生として採用することが決まりました。

7人の訓練生が5月の最終週からDickwellaとNobel Wearへの就職がきまりました。

6月22日に地域事務局から障害者に関する情報が寄せられ、翌日の23日にSumaga事務所へ届けられました。

6月22日に、Wog及びWeligamaの施設において問題に直面している訓練生に対して、手話でのインストラクションが行われました。そして、適切なカウンセリングを通じて、仕事を放棄しないようにしてしまわないよう、指導を受けました。

6月29日には職場の他の従業員に対して、聴覚障害のある人はコミュニケーションが難しいことから、手話の重要性や、彼らに対する積極的な態度についての啓蒙プログラムが開催されました。

8月20日までに、20名のろう者及び重複障害者が訓練生として採用され、プロジェクトも順調に続いています。

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