車椅子クリケット大会(パキスタン、ムルタン)の報告
~2013年車椅子クリケット大会において、マイルストンチームが優勝しました!~
「アダプテッド・スポーツ」とは、従来のスポーツ競技のルールを障害者向けに修正したスポーツのことを指します。しかし、全スポーツ競技でこのような計らいをしているわけではありません。
障害者スポーツ選手は通常、3つのグループに分かれます。ろう者、身体障害者、知的障害者のグループです。各グループはそれぞれ違った競技プログラムをこなしていきます。また、それぞれの競技の歴史も違います。
ろう者の国際大会は、the Comité International des Sports des Sourds(CISS)によって、1924年パリのSilent Gamesから正式に始まりました。そして、この大会は後の近代デフリンピックとなり、主催団体のCISSは各選手の特徴などに基づき、競技を決めていきます。
身体障害者のスポーツ競技は、リハビリテーションのプログラムから生まれました。第二次世界大戦後、負傷した多くの退役軍人や市民に対し、スポーツがリハビリテーションの一部として紹介されました。そしてこのリハビリテーションスポーツはリクリエーションに発展し、そして競技となりました。この発展に貢献したのは、イギリスのStoke Mandeville病院のLudwig Guttmann卿でした。1948年オリンピックがロンドンで開催された際、 彼はStoke Mandeville病院で車椅子の選手達のためにスポーツ大会を開きました。これがStoke Mandeville Gamesのもととなり、近代パラリンピックとなったのです。現在、パラリンピックは国際パラリンピック委員会によって運営されており、様々な国際スポーツ機関も関わりを持っています。
身体障害者のスポーツは、1960年代後半、アメリカにおいて体系化が始まりました。この動きに貢献したDisabled Sports USAは障害を持った退役軍人が、ベトナム戦争で負傷した人達のリハビリテーションを目的として、1967年に設立されました。元々はNational Amputee Skiers Associationとして設立されました。それからDisabled Sports USAは障害者の総合競技大会を行なう、アメリカ内でもトップクラスの大きさを誇る組織となりました。合計すると6万人以上の負傷兵、若者達に貢献しています。
そして1988年以降、国際オリンピック協会は障害者スポーツをまとめ、競技大会にしようと動き始めました。これが後にパラリンピックとなっていきます。また、オリンピックのすぐ後に開催されることも、障害者スポーツの一般認知向上に役立っています。
現在まで、様々なスポーツが、障害者が競技できるように形を変えてきました。そして各競技、何段階かの競技レベルがあります。そして、この障害者スポーツはパラリンピックだけではなく、それ以外の競技大会でも発展してきました。パキスタンでもこの動きは高まってきていて、スポーツの分野のみならず、自立生活への良い影響も出ています。2001年に自立生活の基本哲学をマイルストンが発してから、障害者とその家族への意識向上が高まりました。
マイルストンはスポーツイベントの開催や、他障害者団体への支援を通して、障害者のためのスポーツ活動の基盤を作ってきました。諸外国でも障害者スポーツ活動は盛んになってきています。そして、今年は車椅子クリケット競技が出来て10周年であり、パキスタンでそのお祝いをしました。車椅子クリケットは障害者の間で盛んに行なわれている競技であり、Multan, Mirpurkhas, Mardan, Karachi, Dir and Milestoneの6チームが強豪です。しばしば、各チームが活動する町で試合も行います。
そしてDisabled Persons Organization Multan により、今年の3月2日、3日に車椅子クリケット大会が開かれ、Multan Tigers, Milestone Lions, Mardan Panthers, Mirpurkhas Zebras, Karachi Dolphins and Dir Eaglesの6チームが2日間、対抗しました。
各チームはとても優秀な選手揃いです。Multan Tigersがホストを務め、3月1日には記者会見も行われ、障害者の権利や障害者スポーツについて話を持つこともできました。
チームはプールA、プールBの2つに分けられ、各チームは3試合行い、準決勝に出場する4チームが決定されました。その4チームはMultan Tigers, Karachi Dolphins(プールA)、Mardan Panthers , Milestone Lions(プールB)です。
準決勝1回戦はMultan TigersとMardan Panthersの試合でした。とても接戦でしたが、Asad Ullah選手のまるでパンサーのような素晴らしいプレーによって、Mardan Panthersが最後に勝利を収めました。そして準決勝2回戦はKarachi DolphinsとMilestone Lionsの試合でした。こちらもとても白熱した試合で、最後は経験と熟練した投手達がMilestone Lionsを勝利へ導きました。
そして決勝戦、Mardan PanthersとMultan Lionsの戦いです。終盤、両チームのキャプテンAsadullah選手とRizwan選手がフィールドで対決し、Rizwan選手が一瞬の隙をついて点を入れ、Multan Lionsが頂点に登りました。
こうしてMilestone Lions は2013年車椅子クリケット大会の王者となり、賞品がそれぞれのチームに配られました。そして、Milestone LionsのRizwan選手が年間優秀選手、同チームのAkmal選手が大会優秀選手に選ばれました。
このような素晴らしい障害者イベントを開催でき、運営とホストを担って下さったSociety for Special Persons MultanのIjaz Shahさん、Afzal Sipraさんに大変感謝致します。この大会はパキスタンの障害者運動の新たな1ページをめくることができたことでしょう。