Duskin Leadership Training in Japan

活動報告

一覧に戻る

第20期生 ヨンテンの活動報告

~ダスキンリーダーシップトレーニングプログラムでの体験とブータンにおけるその影響~

私は、第20回ダスキンリーダーシップトレーニングプログラムに参加し、2018年9月から2019年7月までの10ヶ月を日本で過ごしました。このプログラムは、将来のリーダーとなり障害者コミュニティの向上に貢献することを目指す、アジア・太平洋地域在住の若い障害者のために特別に企画されたものです。日本での生活を通して、日本語の基礎から日本の障害者サービスや福祉の理解まで、貴重な知識とスキルを得ることができました。多様な障害を持つ方へのサービスを提供するさまざまなセンターを訪問したことは、最も貴重な経験のひとつです。

写真1

ダスキン卒業から現在までに達成したこと

障害者のための国家政策

日本から帰国後、アシスタント・プログラム・オフィサーとしてDPOブータンに加わりました。2019年9月19日、インデックスエベレストV5という点字制作セット(点字エンボス加工機)と、ノートパソコンが届き、私の専門スキルや日本から得た知識を完璧に補うことができるようになりました。

また「視覚障害者にもアクセスしやすい障害者のための国家政策」の制定のためブータン王国政府、助成機関、DPOと協力し活動しました。これには政策を点字フォーマットにエンボス加工することも含まれます。政府は、視覚障害者や聴覚障害者のエンパワーメントに繋がるよう2019年12月3日の国際障害者デーにあわせてアクセシブルなフォーマットでこの政策を発表しました。

写真2
写真3
点字案内の制作

COVID-19のパンデミックでは、視覚障害者がCOVID-19に関連する情報にアクセスすることが困難になり、その影響を強く受けることとなりました。そこで私はCOVID-19の影響から彼らを守るため、視覚障害者のニーズに合わせて手洗いの手順を音声と触覚で説明するポスターを作成する支援を行いました。

写真4
インクルーシブカレンダー

私は日本で学んだことを活かし、UNFPAブータンの支援を受けてブータン初の「Disability Inclusive Calendar」を作成しました。このカレンダーは視覚障害者向けに、点字や大きな文字で重要なイベントや日付に簡単にアクセスできるようにデザインされています。これはすべての人のニーズを大切にする社会づくりに向けた、小さいながらも重要な一歩です。このカレンダーは、アクセシブルな情報を提供することで、ブータンにおける障害者のエンパワーメントとインクルージョンを目指しています。

写真5
ネイチャーフォーオールプロジェクト

DPOブータンは、SGP、UNDPブータンと協力し、聴覚障害者や視覚障害者が情報にアクセスできるようにするための施策を講じました。助成金に関する認知度を高めるため、点字、音声、ブータン手話のビデオなど、複数のフォーマットでパンフレットを作成しました。

その結果、視覚障害者グループが現れ、"Nature for All "というインクルーシブな植物園の実現に向けた提案書を作成したのです。このプロジェクトは承認され、ティンプー王立植物園がアクセシブルなものへ変わり、誰もが自然の素晴らしさを楽しむことができるようになりました。現在、ティンプー王立植物園ではアクセシブルなトイレの設置を含むバリアフリーな環境で、さまざまな障害を持つ方や高齢者が自然を楽しむことができます。

写真6
公共サービス提供者へのDET(障害平等研修)

障害者平等研修は、障害者の機会均等、尊重、尊厳を守ることを促進する手段であると同時に、能力に関係なくすべての人にとって、より包括的で柔軟な環境を育むものです。障害のある人に力を与え、インクルーシブな社会づくりに貢献する強力なツールなのです。

私と障害を持つ友人たちのチームは、2,000人以上の公共サービス提供者(政策立案者、選挙関係者、地域のリーダー、医療従事者、国連ブータン職員、金融機関、市バス運転手・車掌、タクシー運転手、障害者団体、民間企業)に対してDETを実施しました。この研修では、障害者が助けを必要としたりサービスを求めた際に、それに対して適切なサービスを提供できるような知識や技術を身につけることに重点を置きました。

写真7
金融機関におけるサービス

私はこれまで、障害者が直面するニーズや課題について銀行機関に積極的に提言してきました。そして私たちの啓発活動を通じて、銀行機関はアクセシビリティを向上させるためにいくつかの積極的なステップを踏み出しました。障害者のための優先カウンターの設置、アクセシビリティを確保するためのインフラ整備、そして現在、視覚障害者の利便性を向上させるために、一部のATMに音声読み上げ装置やスクリーンリーダーの設置に取り組んでいます。このような銀行の姿勢は、障害者を含むすべての利用者にとって包括的でアクセシビリティに配慮した取り組みで高く評価されるべきものです。

写真8
市営バスサービスの改善

ティンプー市のバス事業所では、バス職員に対するDET(障害平等研修)の実施後すぐに公共交通機関のアクセシビリティと利便性を向上させるためのさまざまな施策が実施されました。19台のアクセシブルな市バスの導入、スマートカード技術の採用、障害を持つ乗客への20%割引の提供、次の停留所を示すバス内の音声アナウンスの設置などです。このようなアプローチは、ティンプー市バス事務所の包括的かつ効果的なサービス提供への貢献を示しています。

写真9
ブラインドチェスクラブ

視覚障害者がどのようにして社会活動に参加しているかをアメリカ人女性から聞く機会がありました。彼女の協力を得て、アメリカにあるブータン財団から支援を受け、視覚障害者用に特別にデザインされたチェス盤27枚を入手することができました。視覚障害者が集まってチェスをし、地域の友人を作ることができる「ティンプー・ブラインドチェスクラブ」を立ち上げるきっかけとなりました。このクラブは視覚障害者が集まってチェスをし、有意義な交流をすることでソーシャルインクルージョンとエンパワーメントを促進するプラットフォームを提供しています。ブータン財団の支援とティンプー・ブラインド・チェス・クラブの設立は、当地域の視覚障害者のソーシャライゼーションおよび地域社会への参加の機会を創出する上で、大きな役割を果たしました。

写真10
最後に

日本でのダスキンリーダーシップトレーニングプログラムに参加したことは、私にとって人生を変えるような経験であり、エンパワーメントに必要な貴重な知識とスキルを得る機会となりました。このようにブータンの障害者の生活に意味のある影響を与えることができたのは、ダスキン愛の輪基金、JSRPD、戸山サンライズの皆様の揺るぎないご支援の賜物だと感謝しています。

20期研修生
ヨンテン・ジャムソン(ブータン)

top page