斉藤省氏(さいとう工房)パキスタン訪問
(カラチ/ラホール/イスラマバード)2014年4月14日~18日
さいとう工房は日本の車いす製造及び修理の会社で障害者の、特に重度の方への移動のサービスを提供しています。斉藤省さんは手動及び電動車いす製造のエキスパートで、この分野において長い経験があります。彼はパキスタンを長年に渡り訪問し、障害者団体に車いすの製造と修理の研修を実施しています。そして、さくらプロジェクトのハビブ・ウル・ラフマンさんは、車いすの輸入と寄付をしています。彼らは毎年電動車いすを寄付してくれています。今回の訪問ではカラチのDWA、ラホールのマイルストーン協会、そしてイスラマバードのSaaya Associationへ電動車いす修理のワークショップを実施するためにパキスタンを訪問しました。
斉藤さんとハビブさんはDWAカラチで熱烈な歓迎を受け、団体の活動や、バイク製造のワークショップなどの説明と共に、電動車いす配布への感謝を受けました。電動車いすを配布することは、障害者のモビリティを確保すると共に、障害者の社会参加拡大の啓蒙にもつながります。
DWAのスタッフは、斉藤氏とハビブ氏から、様々な方法で電動車椅子を修理する技術を学びました。
次に2人はマイルストーン協会を訪問しました。マイルストーンでは日本から寄付された車いすの修理配布をおこなっています。スタッフは、過去何度も斉藤氏とハビブ氏の指導を受け、優れた修理技術を身に付けています。今回も電動車いすの修理について の研修が実施されました。
3ヵ所目の訪問先であるSaaya Associationは Asim Zafar 氏指導のもと、イスラマバードで障害者支援を長きに渡って行ってきました。車いす修理部門は、さいとう工房とさくらプロジェクトの支援により、最近設立されました。
電動車いす修理のワークショップが実施され、2人からその修理技術を学びました。研修はビデオによるプレゼンテーションとレクチャーが行われ、とても有意義なものでした。
2日間に渡る研修で、あらゆる質問に対して2人からは満足のいく解答がなされました。パキスタンのKAY2 テレビチャンネルは、啓蒙活動のためにこのイベントを放映しました。
2人はイスラマバードにあるJICA事務所を訪問し、近くラホールで実施される障害者のためのプロジェクトについて話し合いが行われました。そのプロジェクトは重度障害者への電動車いす配布、及びセルフマネジメント研修を行い、生産力を身に付け、社会の一員として貢献できる人材になることを目指します。さくらプロジェクトはこのプロジェクトを支援します。
ハビブ氏はプレゼンテーションで、障害者にとっての車いす移動の重要性と、さいとう工房及びさくらプロジェクトの取り組みについて説明しました。
世界保健機関の障害アドバイザーのMaryam Mallik博士と面会し、障害者への移動サービスにおける相互協力について議論が交わされました。
さいとう工房とさくらプロジェクトは、彼らのパキスタンでの、障害者への移動サービスの取り組みに対して協力を依頼し、お互いが協力していくことで合意し、おそらく世界保健機関は、電動車いす配布のパイロットプロジェクトを実施することになりました。
Saaya Association とComsats 情報技術大学により、国際セミナーが開催されました。この大学は、障害問題や障害者のインクルージョンに非常に強い関心を持っています。Saaya Association代表のAsim Zafar氏 は、学生に対して、障害とは何か、自立生活とは何かについて講義しました。Zafar氏は自立生活運動の歴史と、それがどのように障害者の生活に貢献したか、またそのコンセプトがいかに障害者の窮状に変化をもたらしたかについて話しました。
Saaya Associationからもうひとりのスピーカーとして、Saima Aslam 女史が自分史を語りました。自立生活の実現と、セルフマネジメントスキルを学んだことが、いかに彼女の人生を変えたか説明しました。彼女は今自立生活を謳歌し、”私たちは誰かの負担になることなく自立生活を送ることができる”と語りました。
Saima Aslam女史は、介助者を使って、どのように日々の雑用をこなすか実際にやってみました。また、電動車いすがあれば、自由に動くことができ、社会に貢献できると示しました。
斉藤氏は、日本でのさいとう工房の手動車いす製造の歴史について講義しました。彼は、移動は障害者の基本的な問題であり、もしも移動が確保されれば、自立のための第一歩として半分は達成したと言えると話しました。彼は、工房で製造された、重度障害者のための機能を備えた最新の車いすを紹介しました。
ハビブ氏は社会における障害者のインクルージョンの重要性について講義しました。特に障害者の移動支援について強調し、それによって社会で尊敬される存在となり、それは車いすや白杖、補聴器などの支援機器を提供することで達成されると話しました。学生に対して、さくらプロジェクトについて説明し、私たちはバリアフリーで、権利主体の、全ての人のためのインクルーシブな社会を創るため、努力しなければならないと述べました。
報告:マイルストーン協会