去年の8月に初めて日本に来ました。まず、日本の蒸し暑さに驚きました。立っているだけで、肌がベタベタしてきました。モンゴルではこのような経験はありません。立ち並ぶ高層ビルや行き交う車を見ていると、日本に来たんだという実感が湧いてきました。
9月から11月までの2、3ヵ月間、日本語と日本手話の勉強をしました。日本語を教えてくれた先生方は手話が出来ませんでした。でも、身振りや簡単な手話でコミュニケーションを取りながら勉強しました。学んだことを何度も書いて、添削してもらって少しずつ日本語が分かるようになりました。また、先生たちもだんだん手話が上手になってきました。そして簡単な日本語の文章を手話で表現してくれるようになって、日本語の理解が深まりました。手話は4人の先生が教えてくれました。先生方は授業の中で日本の文化やマナーについても教えてくれました。モンゴルと日本の違いが分かって、とても勉強になりまし。
私は日本でパソコンの技術をもっと伸ばしたいと思っていました。パソコン研修が受けられると決まった時はとても嬉しかったです。パソコンを教えてくれた先生は難聴者でした。先生は、日本手話でソフトのことやインターネットのことなど丁寧に教えてくれました。この研修で学んだことは全て私にとって大切なものです。モンゴルにいる時には目にしたことがなかった新しい技術も教えてもらいました。私はモンゴルに帰ったあと、たくさんのろう者を集めて、日本で学んだパソコンの技術を教える計画を持っています。
日本で初めてスキーをしました。一面に広がる銀世界を見た時はとても感動しました。初めは何も分からずに滑っていたのでたくさん転びました。インストラクターの先生からスピードの落とし方や止まり方を教えてもらいました。2日目の朝、全身が筋肉痛になっていました。それでもスキーはとても楽しかったので、一生懸命滑りました。スキー研修は、3日間だけで終わりました。1週間くらい行きたかったです。スキーは工夫をすれば障害をもっていても楽しむことができるスポーツです。
視覚障害の人はインストラクターの先生が声や音で誘導します。車いすの人はバイスキーのうしろについた先生がそのロープを使って速度や方向を調整します。私は視覚障害の人や車いすの人がスキーをするのを初めて見たので、とても驚きました。そして、みんなでスキーを楽しむことができて良かったと思いました。
全日本ろうあ連盟ではその歴史や組織について学びました。私の質問に対して、職員の方が丁寧に応えてくれました。モンゴルろう協会はまだ歴史が浅く、発展途上にあります。全日本ろうあ連盟が行ったさまざまな活動を知ることで、私は帰国後の活動のアイデアを得ることができました。
どんぐりではろう重複の人達が仕事をしていました。そこで働く人達は縫製やパン作り、空き缶つぶしなどの作業を行い、賃金を得ています。作業をするのは月曜から金曜までです。土曜と日曜はお休みなので、自宅に帰る人達もいます。その様子を見て、子供の時の事を思いだしました。モンゴルの小さな村々にはろう学校がないので、遠く離れた町まで通わなければなりません。子供達は月曜から金曜まではろう学校の寄宿舎で生活をし、土曜と日曜だけ両親のところに帰ることができるのです。
字幕製作については、以前から興味を持っていました。新潟で字幕製作に必要な作業を見学したり、実際に機械を触ってみたり、職員の方に質問したりすることで、より一層興味が深まりました。職員の方はより良い字幕を必要としているろう者の立場に立って、作業をすすめる様子を見て、とても感動しました。また、ビデオライブラリーも興味深いサービスです。手続きを行えば、ろう者は無料で字幕付きビデオを借りることができます。これはとても素晴らしいサービスだと感じました。モンゴルには同じようなサービスはありません。
私はろう者の団体だけでなく、肢体障害者団体でも研修をしたいと思っていました。他の障害者団体の設立目的や運営方法を知ることで、ろう者のそれと比較検討したかったからです。でも、ろう者に対する情報保障がある団体はほとんどありません。メインストリーム協会に研修が決まったときも、コミュニケーションが上手くいくかどうかとても不安でしたが、研修が始まるとその不安は吹き飛んでしまいました。メインストリーム協会にはろう者の職員がいたからです。また、講義を受けるときなど、必要な時は手話通訳を手配してもらったので、研修内容を全て理解することができました。
ここには手話を学び、それを生かしてろう者をサポートしたいという強い信念をもった聴者がたくさんいました。手話の授業では、音声言語は使われません。聴者は一生懸命に手話を勉強していました。そうやって手話を全く知らなかった人も、少しずつ手話を習得していきます。その姿を見て、私は強く感動しました。
教頭先生が学校の歴史などを説明してくれました。専攻科を見学したとき、私はとても驚きました。モンゴルにも職業訓練はありますが、男子は木工、女子は縫製というように、性別に応じてコースが決められています。しかし、日本では男女関係無く、コースを選択していました。個別研修と集団研修を受けたおかげで、知識が増え、視野が広くなりました。お世話になった皆さま、ありがとうございました。
私たち研修生は、ネットワークを作りました。そのために、研修生全員が積極的に意見を出し、議論を重ねました。だからこそ、ネットワークを立ち上げることができたのだと思います。このネットワークがあれば、帰国後の活動にも役立つと思います。例えば、モンゴルの障害者に何か問題が起こり、それを解決する方法が見つからない時、ネットワークを通じて、仲間にアドバイスをしてもらうことができます。
日本障害者リハビリテーション協会の皆さん、ダスキン愛の輪運動基金の皆さん、1年間大変お世話になりました。本当にありがとうございました。日本で出会った人たちはすべて、とても親切で、私達の研修を温かくサポートしてくれました。心からお礼を言いたいです。皆さん、ありがとうございました。