初めて日本に足を踏み入れたのは2006年9月1日でした。高層ビルや、障害者のためのバリアフリーの設備が便利なことに驚きました。他の研修生やスタッフの方と会った時、最初は非常に恥ずかしく、緊張しましたが、いろいろな国の友人と初めて話す機会だったので、非常にうれしく、わくわくしました。
最初の3ヶ月、わたしたち研修生は毎日日本語を学びました。お互いの話は最初の一ヶ月は英語、そのあとは日本語と英語を交えて会話するようになりました。お互いの言っていることを聞き取るのは大変難しく、ときに混乱もしましたが、毎日そうやって会話を続けているうちにお互いのことがよくわかるようになりました。3ヶ月後にはとうとう完全に日本語で話し合えるようになり、平仮名やカタカナも書けるようになりました。クラスでは漢字も少々教わったので、簡単な漢字なら読めるようになりました。先生方の教え方はすばらしかったです。それぞれが違う国から来ていて、お互いの文化や国の状況について話し合えるので、日本語クラスは本当に楽しかったです。日本語能力試験にも受かったのことには驚きましたが、うれしかったです。
また、最初の3ヶ月間、毎週木曜には水泳教室がありました。生まれて初めて、プールに入り、他の人たちと泳ぎました。先生方のおかげで、水中での呼吸法や泳ぎ方を身に着けることができました。今ではプールで100メートルも泳げるようになりましたので、国に帰っても泳ごうと思っています。故国カンボジアでは、障害者に対する差別やバリアフリーでないことなどもあって、泳ぐことにいつもためらいがありました。
集団研修ではピア・カウンセリングについて学んだり、様々なところを見学しました。集団研修は非常に楽しく、いろいろ意見交換しました。ま何だことは多岐にわたりましたが、なかでも主な3つについて書きたいと思います。
池住義憲先生はアジア諸国でさまざまな経験を積んだことで知られる先生です。「障害とは何か?」「リーダーシップとは何か」などを教えていただき、大変感銘を受けました。それまで私は「障害(Disability)」という言葉や、その意味すら知りませんでした。
池住先生はアクションプランの立て方についても教えてくれました。 先生の独自の教え方はわたしにとっては新しく、ほかの研修生の興味もひきつけるものでした。先生には障害の概念や様々な教育、リーダーシップについて、多くのことを教えていただきました。
プロジェクト・プロポーザルについて多くの経験をお持ちの川北秀人先生から講義を受けました。 この講義のあと、6人の研修生すべてがプロジェクトの立案書を書き、それについてプレゼンをすることができました。また、それぞれのプレゼンや内容について、研修生同士でコメントすることもできました。川北先生から多くを学ぶことができ非常に感動しました。
井倉由美子先生から、非常に巧みなプレゼンテーション技法を学びました。2日間の研修でしたが、わかりやすく、先生の教え方にすっかり引き込まれました。また、人前でプレゼンをする自信がつき、それまで持っていた不安感が減りました。
お正月には、福島の蒔苗家にお世話になりました。生まれて初めて雪を見て、非常に興奮しました。ホームステイ期間中は、福島で自立生活を営む障害者の人たちも訪問し、福島のお寺を観光したりしてよい友人になりました。蒔苗さんは朝食のときに初めて納豆を勧めてくれ、それから私は納豆が好きになりました。お正月は大変楽しく、非常に親切にしていただいて、まるで自分の家族といるような気持ちになりました。彼らのことは一生忘れません。
日本ではスキー研修に非常に驚きました。1月27日と28日の2日間、雪の降りしきる新潟でスキーを楽しみました。それまでテレビや映画でしか雪を見たことがなかったので、夢を見ているかのような気分になりました。生まれて初めてバイスキーに乗りましたが、とても楽しく素晴らしい経験でした。みんなと一緒に経験した快適でエキサイティングなスキーをわたしは一生忘れません。
自立生活運動について、宮崎で初めて学び、その概念の大切さを知って、自国でも障害者運動を始めたいと思いました。研修期間中、私は都城市の作業所や延岡市のヘルパーステーション、リハビリテーションセンターなど障害者の働く場を見学しました。また、三股市の区役所や障害者宅も訪問しました。
AJU自立の家では、木下さんにAJUの歴史、活動、サービスについて説明を受け、自立体験室に泊まりました。翌日からは、AJU内のさまざまな部署を見学し、AJUがどのように知事や政府と交渉して成功を収めてきたかについて多くを学びました。
メインストリーム協会では2ヶ月研修を受け、障害者がどのように地域で自立生活をしていくかについて学び、自立生活の概念がはっきり分かりました。障害者であっても、生きる権利があり、決める権利があり、自分のことや生活について自分で責任を持つ権利があるということです。これについて知る前は、自立生活運動は大切ではないと思っており、自立生活運動が障害者運動や障害者に対するサービスにつながるものだとは考えてもみませんでした。また、たとえばどのように差別をなくしていくかなどの大切なことも学びました。
メインストリームでの研修中にはたくさんの友人ができ、一日のプログラムのあとは、夕食に行ったり、買い物をしたりおしゃべりをしたりして楽しみました。皆とても親切にしてくれました。わたしは皆さんのことを一生忘れません。
ゴールデンウィーク中は研修生全員とメインストリームのスタッフの皆さんと一緒に、広島市を訪れました。以前から広島には行ってみたかったので、夢が叶い嬉しかったです。これもまた一生忘れられない思い出になりました。
日本ウィールチェアー株式会社では、車椅子の修理を学びました。会社には、障害のタイプによってさまざまな車椅子が揃えられており、このようにたくさん種類があるのを初めて見ました。最初の2日間はあまりに厳しい作業で修理に飽き飽きしましたが、どんな状況でも学ぶべきことがきっとあると考えるようになりました。このように気持ちを切り替えたことで、厳しい作業にも前向きに取り組めるようになり、多くの技術や知識を吸収することができました。
大谷田就労支援センターではホームページビルダーを使い、ホームページの作り方を勉強しました。勉強は非常に楽しく、自身も障害のある先生が、わかりやすいように教えてくださったおかげで、大谷田での研修についてのホームページを作ることができました。
日本に来る前、わたしは障害者運動や障害者活動についてよく理解しておらず、自立生活も、誰からも経済的なことを含め何もサポートや援助を受けずに完全に自立して暮らすことだと思っていました。しかし、個別研修のなかで障害者活動や自立生活運動のリーダーの皆さんと関わって、わたしの考えは変わりました。今では、自立とは自分の生きたい人生を生きることであり、自立生活の重要なポイントは、自分で何でも決断する選択肢があり、選択したあと結果については自分で責任を持つことであり、たとえ障害が重くても、介助を得て幸せに暮らすことはできるのだと考えるに至りました。また、障害がある人と障害のない人は実は同じなのに、社会で障害者に対しては同等の権利を認めていないために、障害者が社会的な差別を受けているのだと思うに至りました。この研修を受けたことで、障害者運動や自立生活運動に対して自分自身も自信がもてたことが、大きな収穫だったと思います。考え方や見方が広がり、自分自身も大きく変えられる経験でした。
カンボジアには、障害者や障害者の権利を擁護する法律がありません。障害者にとっては、情報ひとつ得るのも大変で、十分な情報を得ることができませんでした。わたしは日本で学んだ知識や情報をカンボジアの障害者と分かち合い、自立生活の概念を理解してくれる友人を集めて、一緒に活動を始めたいと思います。また、ワークショップ、セミナーや学習グループを開催し、公立校に出かけて、障害者の置かれた状況を説明したいと思っています。また、日本の友人を招いてセミナーを開き、カンボジアの障害者との障害者運動についての意見交換もしたいと思います。
わたしの夢は、カンボジアの障害者が差別に遭遇することなく、障害のない人と同じように社会に参画できるようになることです。そして、カンボジアに自立センターを設立して、障害者のエンパワメントに努めたいと思います。
広げよう愛の輪運動基金と日本障害者リハビリテーション協会に、このようなすばらしい研修のチャンスを与えていただいたことを心から感謝しています。
研修プログラムが楽しかったのはもとより、5カ国から来たほかの研修生が今では一番の友達になりました。私たち6人の間で、お互いの文化や言葉、環境などについて話し、多くを学びあうことができました。
日本語を3ヶ月の間、丁寧に教えてくださった先生方にも感謝申し上げます。
また、10ヶ月の研修の間、身を粉にして家族のように温かく面倒を見てくださった研修課のスタッフの皆さんにもお礼申し上げます。
また、メインストリーム協会、障害者自立応援センターYah!Doみやざき、ヒューマンケア協会、日本ウィールチェアー株式会社、DPI日本会議など研修でお世話になった皆さん、どうもありがとうございました。
最後に、本プログラム中お世話になったすべての方に感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。障害者の社会を変えられるよう、ベストを尽くします。カンボジアに帰っても、皆さんのことは忘れません。
ダスキンの研修のことは絶対忘れません!
皆さんどうもありがとうございました!