研修の最初の3か月は日本語研修でした。非常に難しく、なかでも発音を難しく感じました。日本語技能試験を受かるべく毎日勉強しました。また、毎週金曜には、ほかの研修生といっしょに水泳に出かけました。以前は障害者がどうやって水泳できるのか分かりませんでしたが、障害者とスポーツについて考えるきっかけになり大変よい経験になりました。水泳は非常に楽しかったです。
グループ研修ではたくさんの先生から障害についての知識を勉強し、日本の障害者の人たちの生活や運動、特に自立生活運動、リーダーシップ研修、国連の障害者権利条約について学びました。
新年にはホームステイ研修で鹿児島に行きました。日本で日本の家庭にお世話になるのは初めてのことでした。私のホストファミリーになったみゆきさん、みちえさんはお二人とも障害があり、日本の障害者の文化や介助システムについて学びました。ホストファミリーには、研修期間中あたたかいおもてなしをいただいたことを心から感謝したいと思います。
コンピュータ研修ではホームページを持つことの大切さを学びました。自分のこと、自分がしている活動のこと、いつ帰国予定であるか、などの情報を世界の誰でも、どこでも私のホームページから見られるのです。また、マイクロソフト・オフィスの使い方も勉強したので、自分でマイクロソフトのプログラムを使ってホームページを作ったり更新したりできるようになりました。
それまで、私は雪というものを見たことがありませんでした。スキー研修では新潟に行きましたが実にたくさん雪があり、そしてとても寒かったです。言葉に言い表せないくらい素晴らしい場所で、先生についてもらってスキーをするのはとても楽しかったですが、何度も転んでスキー板で顔を打ったりしました。痛くて涙がこぼれましたが先生は気にするな、先へいこう、と言ってくれました。特別なスキーがあれば障害者でもスキーをうんと楽しむことが可能です。
ぱあとなあでは2週間ほどお世話になり障害者の人たちの自立生活について学びました。また、ぱあとなあ、そして自立支援プログラムの歴史についても学びました。政府との交渉の手段、日本の障害者運動についても勉強になりました。また、忘れられないのは、研修中みんなで一緒に食事を作ったり、いろいろな場所を一緒に訪ねたりしたことです。ぱあとなあでは温かく迎えていただいたことに感謝します。一生忘れません。
メインストリーム協会ではさらに障害者の人たちの自立生活について学びました。メインストリームは障害者の人たちの切実な努力のうえにやっと創立された自立生活センターです。毎日、いろいろな障害をもつ先生方から、ピア・カウンセリング、自立生活プログラムなどについて学んだほか、2009アジアTRY台湾のイベントのために街頭で基金集めに携わりました。メインストリームの皆さんには温かく接していただいたこと、そして,さよならパーティーを催していただいたことについて感謝したいと思います。
ヒューマンケア協会では自立生活運動について学び、自立生活の意義がはっきり理解できました。また、障害者の人たちのエンパワメントについて学んだほか、カンボジアに帰った後の将来計画について考えました。
さをりに出会ったのはぱあとなあでの研修中でした。さをりは現代的な手織りで、1968年に城みさをさんによって年齢、性別、障害のあるなし、知的レベルに関係なく自分を表現できる方法として創立されたものです。また、技術的にどれだけ優れているか、あるいは織物として均一に仕上がっているかではなく、自由な表現やクリエイティビティに重きが置かれます。そして機械織りをまねるのではなく、人の手の豊かさが重んじられます。織り手が違えばひとつとして同じ布はできません。そしていろいろな個性の人が自由に織った布の一枚一枚が、それぞれ違う美しさをもっています。まさに芸術です。また、さをりは子供、お年寄り、障害のある人、ない人、誰でも楽しむことのできる芸術です。日本に来る前、カンボジアではさまざまな精神や知的障害のある人たちが社会参画するということがなかったため、こういう人たちに出会ったことがありませんでした。研修中、さをりやそのほかの活動を通してダウン症の人や知的障害のある人たちと話すようになり、今後はさをりをカンボジアに広めて、誰でも社会に参加できるようにしていきたいと思うようになりました。毎朝、色を選び、デザインについて考えるのですが、夜になると美しい布が織り上がるのが驚きでした。さよならパーティーの最後に温かい歌で送り出していただいたこと、心から感謝しています。
DPI 日本会議では「DPI」という言葉の意味、そのポリシー、活動、メンバー国の役割について学びました。また、カンボジアの障害者の状況を説明するプレゼンテーションを行ない、スウェーデンの状況と比較する機会をもちました。
日本に来る前、私は日本の障害者の人たちの文化、活動、教育システムなどについて何も知りませんでしたが、研修を通してこれらすべてのことを学ぶことができました。また、それまでは、障害者なのだからと思ってさまざまなチャンスをあきらめてきましたが、今はその考えが変わりました。さをりで知的障害やダウン症の人たちが働いていることを目にしたことが特に大きかったです。日本に来る前もいろいろと目標をもっていましたが、研修の後はもっと目標がはっきりし、知的障害の人たちやダウン症の人たちの権利擁護のために働きたいと現在では思っています。
カンボジアに戻ってからはさをりプロジェクトを母国でも実施したいと思います。実現できれば、さをりを通して知的・肢体障害の人たちも社会参画が可能になると思います。さをりのディレクターの方は、グループで2009年12月か2010年1月にカンボジアにきて、さをりの織り方、そして生徒さんの集め方を障害者の人たちに教えてくださるとのことでした。また、カンボジアの日本大使に紹介してくださるとのことでしたので、さをりの話を大使に伝えたいと思っています。障害者の人たちとともに頑張って働き、障害者の人たちの自立生活の概念を共有していきたいと思っています。
人権はすべての人に保障されるべきものであり、「すべての人の社会」実現の基盤となるものです。日本で出会ったさをりプロジェクトを通じ、カンボジアで障害者、なかでも知的障害、ダウン症の人たちの権利擁護のために活動を開始したいと思っています。
広げよう愛の輪運動基金には日本で研修の機会を与えてくださったことに、また日本障害者リハビリテーション協会の皆さん、そして研修先の皆さんに、一生懸命助けてくださり、10か月の間温かく接していただいたことに心から感謝します。また、本研修が、アジア・太平洋地域の障害者の福祉システム改善の礎となることを祈ってやみません。どうもありがとうございました。