時間が過ぎるのは早いものです。気がつけば、私の研修も修了の時を迎えようとしています。10ヶ月の研修の中で、たくさんの忘れられない思い出や友達ができ、見聞を広げることができました。たくさんの新しい知識も身につけました。
日本に到着してから、タジキスタン、インド、ネパール、インドネシア、フィリピン、フィジーの研修生に会いました。それぞれの生活習慣や信仰する宗教は異なっていましたが、不思議とすぐに友達になり、一緒に食事に行ったり、自分の国や障害者の生活事情について話したりしました。
最初の3ヶ月間は、日本語の勉強でした。来日前に、私は日本語を勉強したことがなかったので、とても心配していました。でも、しばらくしたら、心配はほとんどなくなりました。日本語の授業はとても楽しくて、先生の面白い話を聞くと、難しい文法や単語が覚えやすくなりました。会話練習もたくさんしました。そして、12月に実施された日本語能力試験4級に合格することができました。熱心に教えてくれた先生たちにたくさん感謝しています。
日本に来る前、自分で中国語の点字を少し勉強したことがあります。けれども、私は中途失明なので、指先の感覚があまりよくありません。指導してくれる人もいなかったので、点字の勉強はとても難しかったです。どんなに時間をかけても、一つの点字すら読めませんでした。私は一生かけても点字が読めることはないだろうと思い、途中で諦めてしまいました。
日本の点字の授業も、私にはとても大変でした。しかし、先生はとても熱心に指導してくださって、私をいつも励ましてくれました。そして、触読が難しい私のために、先生たちはわざわざ練習用の小さな点字カードを作ってくれました。カードは持ち歩くことができますので、どこに行っても、空いている時間があれば、点字を読む練習ができました。だんだん一つ一つの点字が読めるようになり、文章が一行読めるようになり、ついには点字のテキストを全部読めるようになりました。私をいつも励まし、点字を教えてくださった先生たちに本当に感謝しています。
中国では障害のある人が仕事に就くのは大変です。しかし、障害のある人たちが一緒に仕事ができたらどんなにいいだろうと考えていました。日本で、私が思い描いていたような団体に出会うことができました。それは自立生活センターです。センターのスタッフは、障害種別を越えて一緒に仕事をしています。障害のないスタッフもいます。自立生活センターでは、障害者のためにいろいろサービスを提供しています。ここで、私は新しい知識、ピア・カウンセリングを勉強しました。ピア・カウンセリングは障害のある仲間同士が気持ちを解放し、距離感をなくして、自信をつけるプログラムです。自立生活センターのもう一つの重要な活動は、障害者運動です。障害者運動がなければ、社会は変わらないという考え方です。中国で日本と同じような障害者運動を起こすことは難しいですが、中国の社会に適した運動の形を見つけ、障害者の生活を変えていきたいと思います。
他にも、たくさんの障害者団体を訪問しました。視覚障害者の団体では、例えば、京都ライトハウス、沖縄県視覚障害者福祉協会などで研修しました。スタッフの皆さんはとても優しくて、私の研修はとても楽しかったです。東京都盲ろう者支援センターでの研修は、一番印象深いものでした。盲ベースの盲ろう者のために考えられた指点字は、本当にすばらしいコミュニケーション手段だと思います。私には盲ろう者の友達がいますが、彼の生活はとても大変です。もし彼とその家族が指点字を学べば、彼の生活はもっと豊かなものになるでしょう。
熊本県でのホームステイは、これまでの人生の中で一番楽しい一週間でした。私は池澤家の一員になりました。池澤家の皆さんはとても親切にしてくれました。池澤家のお父さんとお母さんは仕事で忙しいにも関わらず、私たちと一緒に牧場に行ったり、一緒に温泉に入ったり、馬刺を食べさせたりしてくれたので、とても楽しいお正月になりました。
私が幼かった頃、父は忙しくて、私の誕生日でもほとんど一緒にいてくれませんでした。私には兄弟もいないので、たくさんの人と一緒に誕生日を祝った経験がありませんでした。熊本を離れる前夜、家族の皆さんは、私のために誕生日パーティーを開いてくれました。真子さんはピアノを弾いて、佳子さんがバイオリンを弾いて、私たちは一緒に誕生日の歌を歌いました。私はとても感動して、「このまま時間が止まったらいいな」と思いました。
以前、私は水がとても怖かったです。水泳研修の時も、水の中に入っただけで理由もなく怖くなり、もう泳ぎたくないと思いました。しかし、水泳の先生の熱心な指導のおかげで、私は水に対する恐怖を乗り越えて、少し泳げるようになりました。水泳の先生にたくさん感謝しています。
スキー場に行ったとき、目の前の綺麗な景色に驚きました。童話のような世界でした。山の上から滑り下りてくる感覚は、まるで鳥が空へ飛んでいくようでした。3日間はとても短かったですが、とても楽しく、忘れない思い出になりました。
沖縄での研修中に、私は初めてのスキューバダイビングにチャレンジしました。水の中でたくさんの熱帯魚を見て、とても不思議な感覚でした。本当にすばらしい経験でした。
日本で過ごした10ヶ月間は、とても充実し、とても楽しいものでした。日本で、私はたくさんの「初めて」を経験しました。初めての日本語と点字、初めての水泳、スキー、スキューバダイビング。初めてお刺身も食べました。失明したばかりの頃、とても苦しくて悲しくてたまりませんでしたが、今の私は明るくなって、いっぱい自信が付きました。
障害者分野において、中国は日本より立ち遅れています。帰国後は、私の知識や経験を生かして、祖国の障害者のために貢献したいと思っています。
最後に、広げよう愛の輪運動基金の皆様、日本障害者リハビリテーション協会の皆様、また10ヶ月間私を助けてくださった日本の皆様、本当にありがとうございました。