Duskin Leadership Training in Japan

最終レポート

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ディナ・ラティフのファイナルレポート

自己紹介

私はディナです。モルディブろう協会の会員です。私はモルディブの南方に位置する島の出身ですが、子どもの頃、その島にいるろう者は私だけでした。地域の小学校に通いましたが、そこではろう児に合わせた指導は行われておらず、先生の話していることが分かりませんでした。数年後、首都マーレにある学校に転校しましたが、そこでは教師も学生も手話を使っていて、授業がよく分かるようになりました。私は大学進学を夢見ていましたが、ろう者に高等レベルの教育を提供する学校がないことを知りました。ろう者には進学以外にもたくさんの困難があり、それらを解決するために、ろう協会へ入会することを決意しました。しかし、何をすればろう者のおかれた状況を変えられるのか私には分かりませんでした。そこで、この研修に応募し、日本で学びたいと考えました。

日本に来る前は、勉強についていけないのではないかと心配でしたが、日本人はとても親切で、色々なサポートをしてくれました。

忘れられない思い出

ホームステイ

福岡の吉野幸代さんのお宅でホームステイをしました。日本手話で会話ができるようになっていたので、吉野さんのお父さんは私と話すのが楽しいと言ってくれました。温かい国から来た私にとって、冬の寒さは堪えましたが、お手伝いをしたり、モルディブ料理を振る舞ったりして、楽しく過ごしました。いろいろなところにも連れて行ってもらいましたし、着物も着せていただきました。

スキー研修

新潟でスキー研修をしました。モルディブには雪が降らないので、雪を見るのも触るのも初めてで、不思議な気持ちがしました。初日はうまく滑れず、何度も転びましたが、二日目は一人でスキーができるようになりました。スキー研修を楽しみにしていたので、2日間と言わず、もっと体験したかったです。

個別研修

モルディブには1192の島がありますが、首都でさえ3名の手話通訳者しかいません。手話通訳者の人数が絶対的に不足しているのです。そこで、手話通訳者の養成について学びました。手話指導のために必要となる手話の研究や分析についても学び、手話の文法的要素、手話と音声言語との言語体系の違いなどについて教わりました。手話を指導する際、ナチュラルアプローチという手法を使っていました。これは子どもが言語を自然に身につけるように、学習者に手話を習得させるという教授法です。手話が全くできなかった人がこの教授法を用いて手話を学んだ結果、2~3年で通訳者レベルにまで手話が上達することを知りました。ナチュラルアプローチを用いる時に大切なのは、手話のインプットと会話であり、それを繰り返し行うことです。この教授法を用いて、モルディブでも手話通訳者の養成をしたいと考えています。

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女性ろう者が抱える問題と解決方法

モルディブでは女性ろう者が聞こえる男性に強姦されるケースが多くみられます。また、聞こえる男性と結婚したものの家庭内暴力を受けているろう女性もいます。しかし、誰にも相談できず、一人で悩んでいることが多いです。また、聞こえる両親のもとに生まれたろう児が、親からの愛情を受けられず、育児放棄された結果、非行に走るというケースも見られます。このような問題を解決するためにはどうしたらいいか、長崎や福岡でろう女性のリーダーに話を聞きました。特に長崎では、本村さんのお宅にホームステイしていたので、夜遅くまで意見交換をしながら、ろう女性の問題について考えました。その中で感じたことは、ろう女性が安心して話ができる環境を作ることの大切さです。モルディブに戻ったら、ろう女性の居場所作りをしたいです。そこで情報交換をしたり、一人ひとりの話をゆっくり聞いたりできるような場所にしたいです。

本村さんはいつも優しく私のことを気遣ってくれ、まるでお母さんのようでした。一方で、ろう女性のリーダーとして仕事をする姿は、私のロールモデルでもありました。

島々で生活するろう者の問題

長崎は日本で一番島が多い県です。島で暮らすろう者の実態を知りたいと思い、対馬や五島列島に連れて行ってもらいました。モルディブもそうですが、日本でも島には手話通訳者がいないので、聴者とのコミュニケーションがうまくいかないという問題があることが分かりました。通訳者がいないこともあり、島のろう者は情報が不足しています。

対馬では、島に暮らすろう者と実際に会って、生活上での困難について話を聞きました。聞き取り調査の結果は報告書にまとめ、行政交渉の材料にすることも学びました。

五島列島では、地元ろう者の集まりに参加し、皆さんの生い立ちとこれまでどのようなご苦労があったかを伺うことができました。

ろう教育

いくつかのろう学校を見学しましたが、先生方はろう児の特性を熟知し、様々な工夫を行っていました。例えば、乳幼児クラスでは、ろう児が自然に手話を身につけられるように、0歳の子どもにも手話で話しかけを行っていました。また、クラス授業を行う際は、先生方は子どもと目線を合わせてから話をするようにしていました。授業は基礎から少しずつレベルを上げていくのですが、ろう児がわかるまで何度も繰り返して教えていました。これらの方法を用いることで学力が向上し、日本には大学進学を果たすろう者がたくさんいます。モルディブでは、聞こえる子どもと一緒にろう児が学んでいますが、授業についていけず、学校を途中で辞めてしまうろう児が多いです。学校を中退すると、求職の際に不利になります。ですから、モルディブでは仕事に就けないろう者がたくさんいますし、仕事に就けたとしても低賃金で働いています。

情報技術を活かした授業も印象的でした。ろう児は手元の本を読みながら、先生のお話しを聞くことは難しいですし、先生にとっても本を読んでいるろう児の顔を上げさせることは容易ではありません。そこで、教科書を大きな画面に映し出していました。このような機器があれば、ろう児は教科書から顔を上げることができ、教科書の内容を確認しながら先生の手話を見ることができます。

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私の変化

日本に来るまでは、ろう者以外の障害のある人に対するサポートについて考えたことがありませんでした。いつもろう者のことだけを考えていました。しかし、日本で他の障害のある人たちと一緒に過ごした経験から、帰国後はろう者だけでなく、色々な障害のある人たちと交流していきたいと思うようになりました。また、私は引っ込み思案なところがありましたが、今は積極的な性格になり、遠慮せず何でも質問できるようになりました。

帰国後の目標

帰国後は、以下の4つの目標を達成するために、力を注ぎたいと思います。

1.手話通訳者の養成

医療・教育・労働などあらゆる場面において、ろう者は手話通訳者を必要とします。手話通訳者の数を増やすことは、ろう者の社会進出に繋がります。

2.モルディブ手話の開発

現行のモルディブ手話辞典には、手話単語がわずか300語しか収録されていません。今後、モルディブ手話の分析及び開発を進め、3000語収録を目標に新しい手話辞典の作成を行います。

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3.ろう女性のエンパワメント

ろう女性が集い、楽しく語らえる場所を作ります。モルディブのろう女性は、家に引きこもりがちで、悩みを一人で抱え込んでしまうことが多いです。まずは、気軽に立ち寄れ、楽しくおしゃべりができる場所を提供し、女性たちが安心して心が開けるようになったら、彼女たちの悩みを引き出し、共にその解決策を考えます。

4.ろう教育の発展

モルディブにはろう学校がなく、ろう者が大学に進学することも叶いません。教育をきちんと受けていないせいで、就労機会が得られないろう者も多いです。その状況を打開するには、ろう教育のあり方を変えるしかありません。これは、ろう児の未来のために、必ず取り組まねばならない課題です。

お礼の言葉

ダスキン16期生は、私にとって家族のような存在です。離れ離れになるのは寂しいですが、帰国後もずっと友だちでいたいです。

最後になりましたが、ダスキン愛の輪基金の皆さん、日本障害者リハビリテーション協会の皆さん、お世話になった全ての人に心からお礼を言いたいです。ありがとうございました。

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