ラオスの視覚障害者の新しい希望
日本での私の研修には、3つ大きいテーマがありました。まずは、日本語の研修です。日本に居る期間のほとんどは、日本語を使わなければならないので、日本語の研修は基本であり、研修にとって重要な要素でした。日本語は外国語の中でも好きな言葉だったので、勉強できることになって非常に嬉しかったです。途中で、点字をあまり使い慣れなかったりしたため問題にも直面しましたが、とても良い経験でした。第二に、日本での多くの体験の一つとして、日本人のご家族と生活を共にするホームステイ研修がありました。ホームステイでは、日本の文化や生活様式を学び、自国と比較して似ている点、違う点を確認することができました。最後に、研修の重要な柱でもある個別研修がありました。個別研修では多くの新しいことを学んだので、学んだことをラオスに持ち帰り、ラオスの視覚障害者の生活向上のために応用したいと思っています。また、私が学んだ全ては、ラオスの視覚障害者にとって希望にもなるものです。
日本に来る前、私は視覚障害者に関する新しい動向、中でも教育や就労のシステムについて知りたいという強い意欲を持っていました。実際に日本に着いてからは、多くのことを知り、学んだことで、ラオスの視覚障害者の生活向上のためにもっと貢献したいという強い気持ちが湧き上がりました。バリアフリーの考え方や、障害者のための様々な装置についても学びました。たとえば公共の交通機関では、電車の中で音声を流し、どの駅か、どのへんにいるかを視覚障害者が分かるようになっています。このおかげで、個別研修の間も一人であちこちへ出かけることができました。また、日本では、視覚障害者、中でも大学生や会社員が、スクリーンリーダー、拡大読書機、点字ディスプレイなど大変高度な技術を用いたツールを仕事に使っているのを見学しました。ラオスでは、ラオ語のスクリーンリーダーすらなく、厳しい状況です。教育と就労に関する以外にも、日本ではDAISYの製作や、障害者のスポーツについても学びました。研修で学んだことについては、下記にまとめました。
日本には、視覚障害者のための学校やインクルーシブ教育のための学校があり、この点はラオスに似ています。しかし、日本では点字図書やDAISY図書が学校にあるところがラオスより優れており、視覚障害者用に点字図書やDAISY図書を擁する図書館も多いので、視覚障害者は授業中に点字教科書もDAISY図書も利用可能です。 ラオスの特殊学校には点字図書がありません。また、DAISYを製作する人もいないので、視覚障害者の情報アクセスの障壁となってしまっています。
日本では、視覚障害者を雇用している職場を見学しました。そこでは、視覚障害者はPCの読み上げツールや点字ディスプレイを使って、健常者と一緒に仕事をしていました。このような仕組みが整っているので、日本では視覚障害者の就労のチャンスがラオスより多いのです。
DAISY図書とは、視覚障害者のためのデジタル録音図書のことです。私は個別研修の際に、ATDOでDAISY図書の製作方法を初めて学びました。視覚障害者はデジタル録音図書があれば、情報を「聴いて」理解することができるので、DAISYは非常に重要であると思いました。それだけでなく、DAISY図書は他のところに持っていくのも簡単です。今、日本ではDAISYのユーザー数が増えています。しかし、ラオスの特殊学校には、視覚障害者にとって日々の重要な学習用資料となるDAISY図書を製作する施設がありません。
ADDPでの研修期間中は、障害者スポーツ、中でも視覚障害者を対象にしたゴールボールを見学しました。日本代表チームの合宿に参加させていただき、ラオスのチームにも応用できると思われるルールやテクニックを学びました。また、大分県の「太陽の家」では車いすバスケットボールも見学しました。ここでは、スポーツと仕事が同じ場所で行なわれていました。日本の他地域のパイオニアともいえる取り組みでした。
日本で暮らすことで、多くのことを学び体験しましたが、とくに一人で生活することを学びました。ラオスにいたときは、家族を始め、いつも誰かの手を借りていました。しかし日本では自分の面倒を自分で見なければならず、それによって自信がつくとともに、自分で問題解決する心構えが養われました。私の人生にとってとても良い経験だったと言えます。また、他の研修生と折り合いをつけながら支え合って暮らすこと、また、自国とは違う社会で暮らすことについても学びました。
帰国したらまずしたいこととしては、12月にシンガポールのASEANパラゲームに参加することが決まっているので、視覚障害者のスポーツチームで練習を重ねたいと思っています。また、特殊学校の図書館を一新し、DAISY製作室にしたいと考えています。現在はDAISY図書のための場所が特にないので、これが実現すればラオスでDAISY図書を推進する大きな手掛かりになり、視覚障害者の学生にとっても大きな希望そしてチャンスとなると思います。さらに、ラオスでは大学の経営者たちに視覚障害者を教える経験が足りないからという理由で視覚障害者の学生が大学に進学できない状態なので、日本で得た知識と経験を政府レベルで訴えていきたいと考えています。そして、日本で経験したさまざまな状況を、ラオスでも実現していきたいと思っています。
ダスキン愛の輪基金の皆さん、日本障害者リハビリテーション協会の皆さん、先生方、ホストファミリーの皆さん、ボランティアの皆さんほか、私の研修と日本での滞在中にお世話になった皆さんに、心から御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。