Duskin Leadership Training in Japan

最終レポート

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ミョ―・ミン・タッのファイナルレポート

ミャンマーに帰ってから障がい者の意識向上に取り組みます。

私が日本のダスキンリーダーシップ研修に応募した理由

私はミョ―・ミン・タッといいます。ヤンゴンから来ました。

ミャンマーからダスキンの研修に参加した研修生は、私を入れて全部で6人です。現在、こうした元研修生3人が、ミャンマー自立生活イニシアチブという障害者団体を立ち上げて活動しています。政府と協力して障害者のための法律や政策立案に関わり、障害者に関連するさまざまな活動を展開して、一般の障害者に対する理解や意識を高める運動を続け、先駆的な役割を果たしています。彼らのこうした活動や活動の成果を目にしたことで、私もこの研修プログラムに応募したい気持ちになりました。ダスキン愛の輪基金のおかげで、ありがたくも第20期研修生の一人として選ばれることになりました。

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日本語研修

日本での最初の三か月は、日本語の勉強をしました。先生は全員日本人で、教室で話していいのは日本語のみということになっていたので、私たちも日本語を使わざるを得ませんでした。日本に来る前にすでに3か月日本語を予習していたので、ひらがなやカタカナは難しくありませんでしたが、漢字には手こずりました。しかし先生方の教え方が素晴らしかったので、教えられていることがよくわかり、滞りなく学ぶことができました。先生方は非常に忍耐強く教えてくださり、また全力で私たちを励ましサポートしてくださいました。勉強を頑張ろうという気になり、日本語の読み書きや会話が上達するまで頑張りました。

ホームステイ

ホームステイ研修では8日間、愛媛県新居浜の小野正師さんのお宅でお世話になりました。日本のご家庭にお邪魔したのは初めてのことでした。まるで私が実の息子であるかのように接してくださる日本のご家庭に迎えていただいたのは非常に幸運でしたし、私は外国にいるにもかかわらず、そして自分の家族や友人からは何千キロも離れた地にいるにもかかわらず、すぐ自分の家にいるかのようなくつろいだ気持ちにさせてくださいました。小野さんのお宅はかわいいお子さんを入れて7人のご家族でした。朝から晩までおしゃべりしたり、大変おいしい日本食を食べたりして楽しく過ごしました。私が知るべきことについてもいろいろ説明してくださり、質問にも辛抱強く答えてくださいました。また、日本の文化・生活についていろいろ新しいことがわかるようにと、私にとっておもしろいのではないかと思われることもいろいろ教えてくださいました。今では誰かが愛媛のことを話すのを聞くと、あの時の美しい、素晴らしい思い出が瞬時に蘇ります。

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スキー研修

1月下旬、私たち研修生5人は3日間のスキー研修のため新潟県、越後湯沢に行きました。私にとっては生涯初めてのスキーです。雪は見たことがありませんでした。研修前は、障害のある人がどうやってスキーができるのだろうか、ましてや足も動かせない人もいるのには絶対無理だろう、と思っていました。しかし研修を受けて、非常に障害が重い場合でも、機会が与えられてちゃんとしたサポートがあれば、障害のない人と同じように何でもできるのだということが分かりました。スキーは生涯でも忘れられない思い出、そして幸せな思い出の一つになりました。

個別研修

ホームステイ研修のあとは個別研修でした。個別研修は、ダスキン研修の中でも一番大事なプログラムです。

1. CILだんない

個別研修で最初に訪れたのは滋賀県長浜市にあるCILだんないです。日本に来る前は、重い障害がある人が自分でいろいろ決めたり、自立生活を送ったりするのは無理だと思っていましたが、CILだんないに来てそうした考えが間違っていたことを知りました。CILだんないのメンバーは皆さん障害者でした。しかし、介助者のサポートを得て自立生活をしていました。うち何人かのお宅にお邪魔して、障害があってもどのように生活しているのか、そしてどのように自立生活ができるのか見せていただきました。自分自身も、初めてCILだんないで自立生活体験をしました。障害のあるだんないの皆さんとは、日本やミャンマーの障害者の話、自分自身の体験などを語り合いました。こうしたお話から、皆さんの生活やいろいろ抱えている課題などについて理解を深めることができました。

2. さいとう工房

現在、ミャンマーの車いす利用者数は増え続けています。しかし、車いすのメンテナンスや修理をしてくれる工房はありません。このため、いったん車いすが壊れてしまったら、直すのは至難の業です。このため私は車いすのメンテナンスや修理について学びたいと思いました。(経営者の)斎藤さんは、車いすのこと以外にも、福祉を必要としている人たちの日本の福祉政策についても教えてくださいました。

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3. AJU自立の家(名古屋)

AJU自立の家では自立生活についてさらに学び、また、支援要請のためにどのように社会や地元政府と交渉したり協働して物事を進めたりするのかについて学びました。AJUにお世話になっていた間、山田さんとお食事する機会に恵まれましたが、山田さんはこれまでのご自分の歩みについて話してくださり、大変感動しました。また自分自身にとっても、これから将来の夢に向かって頑張るのに必要な自信とエネルギーをいただいた体験でした。わだちコンピューターハウスおよび小牧ワイナリーでは、障害のある人の就労について学びました。研修の間もっとも印象に残ったのは、他の障害のある人たちとともに、バリアフリーの障害者活動に参加したことでした。

4. メインストリーム協会

メインストリーム協会では大変フレンドリーなスタッフやメンバーの皆さんと一緒に過ごし、なんといっても色濃く楽しい日々を過ごしました。とても短い間だったにもかかわらず、友人となった素晴らしい皆さん、そして私のメンターになってくださった廉田さんと平田さんからとても多くのことを学びました。廉田さんとメインストリームのメンバーの皆さんが当初どのようにメインストリーム協会を設立したかもわかるようになりました。廉田さんはメインストリームの創立には大変苦労なさった模様でしたが、アクセシブルな環境を作るという廉田さんの業績は偉大です。メインストリームで学んだのは、障害があっても人生を楽しむことでした。メインストリームでの研修で私のものの見方や考え方は一転し、非常にプラス思考になりました。メインストリームではどなたも明確な目標をもっていました。そして、仕事を楽しみ、それぞれ課せられた責任を果たしていました。非常に障害が重くても、仕事を頑張り、生活を楽しんでいました。メインストリームでの経験では忘れがたい瞬間が数多くあり、私自身も自信を養うきっかけともなりました。

5. 自立生活センタームーブメント

個別研修の最後の行先は自立生活センタームーブメントでした。ここでは人生初めて、アパートに住むという経験、そして一人で暮らし、自分で何でもやらなければならない生活を経験しました。ムーブメントでは、障害者に対する差別について、また差別をどう克服するか、そして障害者が地域で暮らしていくうえのサポート方法について学びました。

ムーブメントのスタッフの皆さんはみな若く、おもしろい人たちでした。互いの人生や問題、将来について語り合いました。友人となったスタッフの皆さんとは、あちこち行ってみたりもしました。とくに思い出深いのは、公園に行って満開の桜を見たことです。桜の下で日本のお花見をし、お昼を食べました。人生最高の思い出です。また、「バリアフリー2019」展にも参加しました。この展示会ではいろいろなことを学んだほか、インフラがバリアフリーであることの意義についても学びました。

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日本のバリアフリー環境

日本のバリアフリー環境には心底驚かされました。日本ではビルのほとんど、交通のほとんど、そして製品でさえ、障害者にとってアクセシブル、かつバリアフリーです。日本の障害者の生活は非常に便利です。日本は今ユニバーサルデザインをすべての建築物や商品に採り入れようとしています。日本では障害者運動によってバリアフリー環境を作るための努力が何十年も前に始まりました。今も運動は継続しており日に日に拡大しています。ミャンマーでは幾多というバリアがあり、しかも自分の家の戸口からすでにバリアが始まります。身体障害のある人は思うように外出するなど考えることすらなくなります。そしてアクセシビリティが欠落していることで、自分を成長させることができなくなったり、他の人より成長が遅れたりしているのです。

国に戻ってからの目標

10か月の研修の期間中、数多くの障害者リーダーに出会い、日本が以前どのようだったか、そしてどのように日本の障害者の人たちが頑張って障害者運動を続けてきたかを知りました。私の国ではアクセシビリティは大きな問題です。このため私は自分自身の大きな目標として、政府各省庁と交渉し、物理的なインフラ、教育、すべての人にアクセシブルな道路などを作り、どんな障害にとってもアクセシブルな環境づくりに取り組みたいと思います。このプロジェクトの一環として、障害者のためのスマホ用バリアフリーアプリを作り、障害者バリアフリーの場所を見つけたり、必要な情報を手に入れられたりできるようにしたいと思います。また障害者のためのカウンセリングセンターを設立し、自立生活についてのアドバイスやガイダンスができるようにしたいと思います。また、インクルーシブ教育、障害者の就労や福祉システムなどにも取り組みたいと考えています。さまざまなタイプの障害者とともに障害者運動にも参加し、社会の障害者に対する意識向上に取り組みたいと思います。

感謝の言葉

ダスキン愛の輪基金、日本障害者リハビリテーション協会、戸山サンライズの皆さん、日本語クラスの先生方、水泳やスキーの先生方、ホームステイのホストファミリーのご家族、そしてさまざまな研修先で私を温かく迎えてくださった皆様、ボランティアの皆さん、そして私の滞在を楽しく意義あるものにしてくださった日本の友人の皆さんに、心からの御礼を申し上げたいと思います

第20期研修生はみな家族のようになりました。一緒に暮らし共に時間を過ごしたことは本当に素晴らしい体験でした。ここで別れ、それぞれの国に帰るのは寂しいことですが、私は一緒に過ごした思い出をいつまでも大切にし、いつまでも心からの感謝の気持ちを忘れないことでしょう。

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