Duskin Leadership Training in Japan

最終レポート

プロフィールに戻る

アリ・トミー・ヘーゼルマンのファイナルレポート

私の人生を変えた日本のダスキン・ジャーニー

はじめに:

皆さん、タロファ(こんにちは)。

私は南太平洋に位置する美しい島国、サモアの出身です。趣味はいろいろな言語や文化を学ぶこと、権利擁護ツールとしてFacebookを使うこと、新しく人に会って、人脈やパートナーシップを築くことです。サモアから研修生が選ばれたのは初めてのことで、障害者のための研修事業に選出していただいたことを光栄に思っています。この研修で私の人生はまさに一変しました。

私はサモアで国立の障害者権利擁護団体および、サモアの視覚障害者団体を代表して参加しています。今回の研修で身についた知識、スキル、経験は私のサモアの障害者団体に、そして若い視覚障害者として個人的にも深く関連のあるものだと強く感じています。

写真1

日本語と日本語点字の授業について

日本に到着して3か月、私たち研修生は日本語の基礎を学ぶという大変貴重な機会を与えられました。日本語の授業は日本の人たちと意思疎通をはかるだけでなく、思い出深い友人関係や人脈、果ては将来仕事上のパートナーシップを築く能力を養うのに不可欠です。目の見えない私にとっては個人的にも、日々の日本での暮らしに必要なことを人に伝えたりするうえで大切でした。日本語を学ぶことで日本の人の考え方をより理解し、日本のさまざまな障害者団体がなぜ、そしてどのように、障害者の生活向上に向けてそれぞれサービスを提供したり、いろいろな考え方の啓蒙に努めたりしているのかが理解できたので、大変感謝しています。

また、日本語の点字は素晴らしく、生きた言葉であると感じました。勉強できたことを大変感謝しています。サモアでも点字の普及に努めたいと思います。

日本では自販機、看板、電車の駅の説明書きなど、ありとあらゆる公共の場に点字が見られたことに大変驚きました。サモアで働き、生活している日本人、またサモアを訪れる日本の観光客に対し、今回学んだ日本語を使ってコミュニケーションを図り、サモアや太平洋地域にある日系の援助団体と提携関係を築いていきたいと思います。

研修期間中、私たち研修生はグループ研修で、自分たちと違うさまざまな障害のある人たちについて学ぶ機会が与えられました。種類に関わらず全ての障害に関する活動や提携関係を作っていくための知識やスキル、なかでも種類に関わらず全ての障害を対象とするアプローチが必要とされる全国レベルの権利擁護運動に必要な知識やスキルを学ぶうえで、大変貴重な学びでした。

グループ研修の間は、いくつか大学も訪問しました。それぞれ障害を持つ学生のための支援センターを備えており、障害のない学生との交流や人脈作りを支えていました。こうしたグループ研修からは多くの学びがあっただけでなく、私たち4人の研修生もこのグループ研修ではお互い助け合い、チームワークやスケジュール管理について学び、日々のグループ研修における責任の果たし方についても学んだため、お互いの絆が強まるきっかけとなりました。また学んだ内容の全てはすべて実用的であるだけでなく、生涯にわたってとても大切なことばかりでした。

個別研修

個別研修では日本中のさまざまな団体に派遣され、目が見えない、あるいは視覚障害のある人たちをサポートするのに必要な大切なスキルについて学びました。障害者授産所ウイズでは目の見えない人や視覚障害のある人たちを対象としたさまざまな仕事や、同授産所の提供するサービスについて学びました。ウイズのワークショップでは、白杖の作り方も習いました。難しかったですが何とか作ることができ、他にも実用的なスキルを習いました。また、ブラインドサッカーに参加したり、視覚障害者の学校を訪ねたり、能力開発ワークショップに参加したりして、いろいろな人と交流し、つながることができました。

写真2

日本点字図書館でも研修しました。ここではラジオの対談や意識向上プログラムに参加したりして、同図書館のさまざまなサービスについて学びました。なかでも点字図書の作り方や販売について学んだのですが、サモアの私の協会でも点字資料を作っているので、非常に有用なスキルを学ぶことができたと思っています。また、デイジーのフォーマットについても初めて知りました。「ふれる博物館」も面白かったですし、日本点字図書館創立者や、図書館の歴史についても学びました。2013年にマレーシアとサモアでそれぞれ日本点字図書館のご厚意により開催された池田輝子ICT奨学金事業、およびデジタル点字研修事業の研修生として学んだ経験があったことから、点字図書館を訪れてこのような経験をできたことは特別な思い出となりました。今回は歩行訓練を受け、移動方法について研修を受けて、手で触ったり、点字ブロックを頼りに歩き、自分で電車に乗って移動する方法を学びました。いずれも人生が一変する経験でした。

また、「ゆに」という団体も訪問しました。「ゆに」ではインクルーシブ教育サービスおよび重度の障害がある人を対象とした介助サービスについて学びました。また、目の見えない人、特に高齢になってから目が見えなくなった人のヘルパー向けの3日間の集中研修にも参加しました。大変楽しく忘れがたい経験でした。また、京都の観光地のアクセシビリティ調査にも参加することができました。さらに、目の見えない学生がアクセスできる資料を提供している大学も訪れました。さらに、目が見えない・視覚障害のある学生や社会人にも会いました。お互いのこれまでの経験を語り合い、日本では「食べにケーション」とか「飲みにニケーション」と言われますが、インフォーマルな形でつながることができ、彼らからは多くのことを学びました。

写真3

また、日本ライトハウスでは、オンラインのデジタル図書館「サピエ」について学びました。サピエは点字およびデイジーの本やオーディオフィルムを多数所蔵しています。サービスフロアにある所蔵品をいろいろ試したり、オーディオガイドについて学んだり、初めて盲導犬を連れて歩く体験をしたりしました。また、大阪ではそれ以外にも、大阪のライトハウスとの提携により、あるいはライトハウスのサービスの一環として、目の見えない人のサポートをしている小規模の団体を複数訪問しました。竹下ご夫妻のお宅にも滞在させていただき、お二人の生活についても学ばせていただきました。大変励みになる経験でした。また、大阪の重要な史跡なども訪れることができ、一瞬一瞬が楽しい滞在でした。

4月から6月まではコロナウイルスによる緊急非常事態宣言が発令され、国際視覚障害者援護協会(IAVI)に避難することとなりました。この協会はマッサージや針灸などの職業技術を学べるようアジアやアフリカの若い視覚障害者に奨学金を提供しています。ここでは生涯の友となる人たちに出会いました。いつか、サモアの代表もこの奨学金の対象として研修に参加できればと思います。緊急非常事態の間は、デイジーの本を作る方法についての研修を受けました。スキルとしては大変難しいものの、私のサモアの団体においては絶対的に実用的なスキルだと感じました。

また、自立生活スキルもいくつか習いました。これらのスキルによって前より自立して生活することができるようになったので、大変感謝しています。また、自分で物事を決断し、できるだけ自分で支出計画を立てることもできるようになりました。

そのほかの経験

冬休みには、ホームステイに参加することができ、東京で榎本さん、郡司さんのお宅にお邪魔しました。お世話になっていた間、日本の新年のお祝いや、日本の家族生活、文化のほか、歴史についてもより深く学びました。また、日本のサモアコミュニティともつながることができました。日本に滞在していた間、異国での我が家ともいえる生活をさせていただき、サポートしてくださり、特にコロナウイルスの蔓延による緊急事態宣言下で私を励まし続けてくださったすべての皆様にいつまでも深い感謝の念に堪えません。

また、緊急事態宣言下では「チームふわふわ」ともご縁がありました。チームふわふわでは障害のある人たちに関わる活動についてさらに教えていただき、千葉県のとても和やかで落ち着いたスポットにも連れていっていただきました。

今後の歩みについて

サモアに戻ってから着手したいと思っていることは次のとおりです。

  1. 身につけた日本語および日本点字のスキルを維持し、伸ばし、日本の皆さんとの人脈を広げたいと思っています。長期にわたるパートナーシップが築ければと考えています。
  2. 研修で得た知識を他の人と共有し、虐待防止や障害者の平等など、さまざまな分野に関する研修を実施したいです。
  3. 点字作成サービスをさらに向上させ、日本で実施されている点字による投票システムをサモアでも導入したいと思います。
  4. 目の見えない読者に本を紹介するサピエ図書館を例として提案し、サモアおよび太平洋地域各国の政府に働きかけ、マラケシュ条約批准を呼び掛けたいと思います。
  5. サモアのICT協会と協働して、オーディオガイド、オーディオつき映画やドキュメンタリーの利用を促進するプロジェクトを推進したいと思います。
  6. JICAに働きかけてデイジープロジェクトを発動させたいです。
  7. 目の見えない人たちのためだけでなく、障害を持つすべての人のために活動を続け、サモアの障害者の生活向上に努めたいと思います。

まとめ:

この場をお借りして、私および他の研修生たちがダスキンの研修の間、大変貴重なスキルを身につける手助けをしてくださったすべての団体の皆様に御礼を申し上げたいと思います。お時間を割きご親切にしてくだり、目の見えない人たちにだけでなく、日本の障害者のあるすべての人のために皆様の団体が提供なさっているサービスを快くご紹介いただいたことを、厚く御礼申し上げます。

また、日本語や日本点字を教えてくださいました先生方、アーワンさんのために通訳をしてくださった手話通訳の方、研修の間英語通訳をしてくださり、私たちと日本や日本の生活様式の間の橋渡しをしてくださった中村さん、心よりありがとうございました。

また、ホストファミリーの皆さん、温かく迎えてくださり、本当にありがとうございました。

さらに、世界でもっともアクセシブルな場所である戸山サンライズの、この上なく素晴らしいスタッフの皆様。私をはじめ、他のダスキン研修生が日本滞在中、ご親切にしていただいたことと皆様のお気遣い、本当にありがとうございました。

また、同期生のヒョウさん、アンジュさん、アーワンさん、日本の研修の間のサポートとヘルプをありがとうございました。皆さんは素晴らしいリーダーです。これからのご活躍を祈っています。

また、日本障害者リハビリテーション協会の研修課スタッフの皆様、同期の研修生に対し、なかでも私に対しては日々のサポートに加え、特に点字やデジタル資料がちゃんと整っているか常に確認してくださり、コロナウイルス蔓延下においても追加の研修を考えてくださり、さらに帰国のためのフライトを手配してくださり、心よりありがとうございました。受けたご親切に対し言葉ではとても感謝の念を書き尽くせません。また新しくリーダーとなるダスキン研修生をお迎えになるにあたり、すべてが滞りなく進みますよう、お祈りしております。

最後になりましたが、ダスキン愛の輪基金の皆様、研修プログラムを提供してくださり、本当にありがとうございました。このプログラムによって私の人生は一変することとなりました。今後も多くの皆様の人生を変えることになろうことを信じてやみません。

top page