将来を見据える人たちをエンパワーメント: スリランカにおける障害者のインクルージョンとアクセス
私の名前はハルシャニ・カウシャルヤです。スリランカから来ました。弱視ですが、それでも目を使って何か貢献できることがあると固く信じていますし、できるだけ他の人を助けたいという気持ちが強いです。二年前、コロンボ大学を卒業しました。世の中を変えたいという強い信念と思いから、10月23日に来日し、第23回ダスキン・リーダーシップ研修プログラムに参加しました。この研修は個人的に大きな体験になっただけでなく、私の祖国にとっても大きな希望をもたらすものです。この研修を通して数々の貴重なスキルや知見を身につけることができました。帰国した際にはこれらを他の人たちと分かち合い、母国でもさまざまな取り組みを実施したいと強く思っています。
プログラムでは三カ月、日本語研修を受けました。私の旅路にとって大切な基盤となる研修でした。将来的に日本の点字をスリランカの視覚障害者の学生に広めるインフラを作りたいと考えているので、日本語を理解できるようになることは個人的にとても大事なことでした。スリランカの視覚障害の学生は日本語を学びたい気持ちが強いのですが、日本語の点字を日本語に翻訳する翻訳者がいないことが障壁になって、日本語科目が履修できないという状況にあります。
ダスキンの研修中は、日本語のスキルを高め、点字を学ぶ機会がありました。これらのスキルは個別研修を滞りなく受けるうえで大切でした。日本語が上達したおかげで、人ときちんとコミュニケーションしたり、研修の資料を深く理解したりすることができました。特に、新しい情報やリソースに触れられるようになったため、点字の学習は力になりました。
ダスキンの研修プログラム期間、私たち研修生は車いすやモビリティを使った介助トレーニングも受けました。研修の間、お互いを助け合い、協力的でインクルーシブな環境で研修する上で大変有意義な研修でした。きちんとしたテクニックを学び現実に体験してみることで効果的に移動できるようになりましたし、研修生同士助け合って、参加者全員の研修体験がより良いものとなりました。また、研修によって、一人では難しいことでも、お互いを助け合い協力することで実現できることを改めて認識しました。
ダスキンの研修プログラム、なかでも集団研修の第一部と第二部で、研修生としてもリーダーとしても私の学びは大きかったと思います。リーダーシップスキルが向上しましたし、インクルーシブな環境づくりのための効果的なコミュニケーションの方法や、動機付け、指導テクニックなどを学ぶことができました。プログラムを通して障害者の問題に対する自分の意識がいっそう高まり、どうしたらインクルーシブな行動を促進できるのか、どうしたらよりしっかりサポートされた、アクセシブルなコミュニティを作ることができるのかを学べました。また、研修プログラムによって自信がつき、個人的にも成長できたと思います。また、自己を振り返ることによって、進捗状況を評価したり、達成したことを素直に喜んだりすることを学びました。
将来についても明確なビジョンができました。前進し続けていくための目標や行動計画もはっきりしました。日本などの外国の障害者政策について学ぶことで視野が広がり、権利擁護について、この上ない学びとなりました。そしてこれらの体験から、他の人たちを導き啓発していきたいという力が湧いてきました。
研修ではリーダーシップスキルのほかに、提案書の書き方を学び、説得力のある提案書の作成やその目標を明確に説明すること、効果的な予算計画を立てることができるようになりました。こうしたことにより、スリランカの障害者の人たち向けのサービス向上を目的とした資金集め活動ができると思います。 プレゼンテーション能力もアップしました。関係者やコミュニティの人たちに対して説得力あるケーススタディを紹介することで、障害者の人たちの権利擁護にも役立つと考えています。
また、人脈作りのスキルについても学びました。職業上の関係づくりや、そうした人脈を活かしコラボレーションにつなげること、専門家や各団体とつながって支援を受けることなどができるようになりました。こうした体験やスキルによって、障害者のインクルージョンや、インパクトあるプロジェクトの計画、よりインクルーシブな社会づくりなどに向けた方法を身につけられたので、スリランカのために、より効果的なリーダーになる準備ができたと思います。
個別研修は、障害のある大学生を指導する教師になるためのとても大切な経験でした。個別研修で学んだことは、スリランカにとって大きな利益をもたらすだろうと思われます。京都の立命館大学、佛教大学、京都外国語大学、同志社大学など大阪や京都の大学を訪問して、障害のある大学生のための支援システムを見学しました。インクルーシブな環境作りの大切さを感じ、障害のある大学生の教育効果を高められるように、スリランカの大学で同じような仕組みを作りたいと思いました。
また、日本点字図書館、京都ライトハウス、大阪ライトハウス、ヒューマンケア協会、京都市聴覚言語障害センターを訪ね、さまざまな障害のある人々にとってアクセスしやすい職場づくりや役に立つリソースを提供するにはどうしたらいいかなどのアイディアを頂きました。スリランカで視覚、聴覚、肢体障害の人たちのニーズを満たせる包括的な支援システムを作る上で欠かせない知識となりました。
また、アクセシブルな図書を作るシステム「DAISY」についても学び、テキストや読みものの代替形式を作ってどんな学生でも同様に履修項目の資料を利用できるようにするスキルも学びました。これができれば、スリランカで印刷物が読めない学生の学習が大きく改善できますし、一人で学んで自立するうえでも大いに役立つはずです。
八王子のヒューマンケア協会ではピアカウンセリングのコースを履修しました。障害のある学生の学習環境を精神的な、また実践的な支援を通じて支えるスキルを身につけました。一言でいって、ダスキンのリーダーシップ研修プログラムの経験は、私自身の大きな変革以外のなにものでもありませんでした。リーダーシップの力をつけ、障害者のインクルージョンに関する理解も深まりました。
ダスキンのリーダーシップ研修プログラムの間には、さらに二つ、大事な分野について学ぶ機会がありました。ひとつはパラスポーツ、もう一つは障害者にとってのアクセシブルな環境です。パラスポーツは障害のある選手の能力を社会に提示することにより、社会のインクルーシブ性が高まるだけでなく、障害に対する社会の意識向上、差別や偏見の減少につながります。パラスポーツでは体を動かすことを推奨することで、障害者の心身の健康を改善し、選手同士や家族間、支援者間のつながりができて連帯感が生まれてきます。また、こうしたスポーツが表に出れば、資金提供が増えたり、国際競技が発展していったり、そうした競技へ参加したり、といった可能性が広がります。
私は日本でいろいろなアクセシブルな場所や企業を訪ねて、インクルーシブな環境づくりの大切さを痛感しました。スリランカでアクセシブルな観光プログラムが開始され、障害者もそうした場所に思う存分行くことができ、自国のさまざまな魅力を楽しめるようにするためにどうしたらいいか必要なアイディアや戦略を考えるに至りました。このような活動をともに進め、能力に関係なくどんな人も十分活躍でき、有意義に貢献できる、よりインクルーシブな社会を作りたいと思います。
日本の研修で学んだことをスリランカの視覚障害者のコミュニティにぜひ持ち帰りたいと思います。目的は、日本語と日本語の点字の教育を推進する財団を作って、日本で学んできたことを活かし、現実にポジティブな変化をもたらすことです。研修のおかげで、障害者に対する政策やインクルーシブな取り組みに対する視野が広がっただけでなく、アクセシブルな図書の製作、ピアカウンセリングといった実践的なスキルも身につけることができました。このような学びのおかげで、相互扶助とエンパワーメントに根差した環境を自国でも作っていこうと強く決意するに至りました。
今後は障害者の権利擁護および、インクルーシブな教育を進め、スリランカのすべての人にとってよりアクセシブルで、サポートが得られる環境を作っていきたいと思っています。ダスキンの研修のおかげでこの目的に向けたしっかりした基盤を作ることができ、私のコミュニティ、そして外部に向けて、今後継続的に変化をもたらす取り組みをリードしていく力をいただきました。