模索の旅
もう研修も7割ほど終わったのに、まだ自分が何を探し求めていたのかわからないままに帰国することになるのではないかと私は危ぶんでいました。まさにそのとき、DAISYの研修が始まり、私はモンゴルの障害者、なかでも視覚障害者、そして自分のために探していたものを掴み取ることができました。それはDAISYだったのです。DAISYを比較的早く習得し、「東北大地震による原発事故の放射線被爆に関する基本知識」などのDAISYブックを作成することができました。この本の製作には時間も努力も相当かかりましたが、インターネットにアップロードしたときには、やっと学んだ知識をこの小さな本にしたことで日本の兄弟姉妹にささやかなりとも貢献できたように感じ、嬉しく思いました。
長い旅の終わりにおいて、私は探し続けていたもの、いえそれ以上のものを見つけることができました。日本の人たちの中で日本文化を経験しながら暮らしたこと。障害があろうとなかろうと誰もが平等に暮らしている日本社会を経験したこと。アジアの7ケ国から来たほかの研修生仲間と10ヶ月を過ごしたこと。ほかの障害を持つ人たちに出会ったこと。毎日が新しいことの発見でした。その中でも一番の収穫は、生涯の友となる友人を得たことでした。
今回の旅はこれで終わりましたが、私がここで見つけたさらに難しい旅路が、始まろうとしています。日本で学んだことを日本の友人と力を合わせて実践し、モンゴル全土をバリアフリー化し、モンゴル語の情報のアクセシビリティを実現し、誰もが平和に平等に暮らせる社会を実現したいと思っています。
広げよう愛の輪運動基金、日本障害者リハビリテーション協会、光友会、DPI日本会議、ウィズ半田、日本ライトハウス、支援技術開発機構のスタッフの皆さんに深い感謝の意を捧げたいと思います。また、研修中に私を支えてくれた日本の兄弟姉妹に心から感謝しています。日本に、そして皆様ひとりひとりに、神様のお恵みがありますように。