10ヶ月間の研修ではじまった私の旅
これまで海外に行くチャンスは何度かありましたが、タイミングが合わず実現しませんでした。今回、初めての訪問国が日本であったことは、たいへん幸運でした。しかし、初めての海外だったので、飛行機にどうやって乗り降りするのかなど、少し心配ではありました。
パキスタンでは日本の人たちと働いたことがあったので、日本人の行動や暮らし、習慣、宗教などについて多少の知識はありました。しかし、日本で日本の人に囲まれて長く暮らすのに十分とは言えません。しかも、6ヶ国からやって来るほかの研修生たちと暮らすのです。これは忘れられない思い出になりました。
関西国際空港に着いたとき、日本障害者リハビリテーション協会や広げよう愛の輪運動基金のスタッフの皆さんが温かく歓迎してくださいました。これはとても印象的な出来事で、人生で最高の思い出になりました。空港に降り立った瞬間から、私の研修は始まりました。人生初のフライトには、まるで死体のように担がれて搭乗しましたが、降りたときには関西空港の設備が非常に整っているのに驚きました。
9月の初旬に日本語研修が始まりました。それまで日本語を勉強したことはまったくなかったので、非常に難しかったです。ほかの研修生と比べて、3ヶ月間の日本語研修で私はいちばんの劣等生だったと思います。日本語があまりに難しいので毎日山のような宿題に悩まされ、外出もままなりませんでした。しかし、先生方は経験豊富でたいへんご親切だったので、ようやく私の日本語も少しずつものになってきました。12月10日に予定されていた日本語試験に合格できるのかどうか心配でしたが、神様のお力により日本語能力試験のN5レベルに合格することができました。
ダスキンのリーダーシップ研修の核となるものは、各研修生がさまざまな場所へ行って受ける個別研修です。個別研修では自分の勉強したいテーマ、ならびに自分の国で障害者リーダーとなったときに必要なことを勉強します。
個別研修の成果は個人個人の努力によりますが、最初からきちんと計画してはっきりしたアイディアをもっていることが大切です。そうであれば、研修生は日本の障害者運動のリーダーとして活躍する人たちからたくさんのアイディアやスキルを習うことができます。そうした最高のリーダーシップ研修を受けた研修生が将来の障害者運動のリーダーとなることを誰も止めることはできないでしょう。
私は奥平さん及び美しい研修コーディネーターの了解を得て、個別研修のプログラムを組みました。そして、日本の障害者運動のなかでも有数の諸機関で研修を受けることができたので、自分の立てた計画をたいへん誇りに思っています。
個別研修ではまず熊本の自立生活センターで2週間お世話になりました。日本の自立生活センターを訪ねたのはこれが初めてです。自立生活センターのスタッフの皆さんはとてもフレンドリーで、すぐに友人になりました。
私の熊本行きは個別研修の中で唯一、私自身ではなく研修コーディネーターの人たちが決めたものでした。最初の3ヶ月間は東京近郊ばかりを見て、日本は完全にバリアフリーの国だという印象をもったからですが、実際のところはまったく違いました。熊本を訪ねてからは、地方都市はまだ100%バリアフリーでないことがわかりました。
自立生活センターでは人権、差別禁止法、政府との交渉などについて学びました。また熊本知事とも面会する機会に恵まれました。今でもときどき熊本の友人と電話で話しています。
スキー研修の後、DPI日本会議でモンゴルの研修生と一緒に2週間の研修を受けました。DPI日本会議を訪ねるにあたって、私はとてもワクワクしていました。障害者権利条約、エンパワメント、権利擁護、バリアフリーなど今まで学んだことについてより詳しく知ることができました。また、初めて自分で点字の名刺を作りました。小さなオフィスで働いていると、スタッフがお互いうまくいかないことも多くあります。しかしDPIではみなさんが仲良く働いていて、親友同士でもあり、そのことに大変感動しました。
かねてより有名な自立生活センターであるメインストリーム協会を訪ねたいと思っていましたが、行ってみるとそこはただのCILではなく、素敵なライフスタイルそのものでした。まず私は、ミッションや目的、目標をはっきり持って障害者運動に一生懸命取り組んでいる皆さんの様子に驚かされました。メインストリーム協会は世界でも有数の障害者運動を行っています。私は自国で障害者運動に関わってはいましたが、パキスタンの障害者運動はペーパーワークで終わってしまい、実働に至っていない気がします。スタッフの皆さんはとてもフレンドリーかつ親切で楽しく、まるで家族と過ごしているかのようでした。メインストリーム協会を訪ねる前は、自立生活のことは嫌いで、パキスタンには必要ないと考えていました。経験と知識不足のせいだったと今では思います。2カ月半のメインストリーム協会での研修が終わる頃には、すっかり自立生活という考えのファンになっていました。メインストリームの独特な研修スタイルのおかげで、レクチャーやワークショップではない形で自立生活やCILのサービスや管理について学びました。まずは廉田さんと研修や研修内容について話し合い、最初の週は何も研修プログラムがありませんでしたが、メインストリーム協会で多くの友達ができました。毎日真夜中まで話をし、一緒に出かけました。自立生活が嫌いだった私でもファンになるのですから、このシステムは最良だと思います。メインストリームのおかげです!もし講義やワークショップばかりだったら、自立生活がますます嫌いになっていたかもしれません。メインストリームの独特な研修スタイルに感謝です。
メインストリーム協会、大好きです!私たちの交友関係が今後パキスタンの発展に寄与し、同国が政策やインフラを整備して障害者にとって優しい国となっていきますように。
最後の個別研修は、2011年5月の全国自立センター協議会、そしてヒューマンケア協会での3週間でした。日本初の自立生活センターの創立者であり代表でもある有名な障害者運動リーダーの方から研修を受けることができたことはとても幸運でした。全国自立センター協議会とヒューマンケア協会でのプログラム内容はたいへん独特で、人権や法律、自立生活センターなどについて講義ではない形で勉強しました。中西正司さんとさまざまな機関を訪ねてこれらのことを勉強し、中西さんがセミナーやイベントを開催したり、政府の要人と交渉したりするのを見学しました。